チームワークとは「複数の人間がともに行動し一定の成果を上げるための人間関係の在り方」と定義することが出来るが、外的環境に変化(技術革新)が起こると、「チームワーク」もかたちを変えざるをえないのではないか。今回はそれがテーマである。 集団行動を考える場合、昔から軍隊を例に取ることが多い。高坂正尭の「戦争の世紀」と題する講演を聴いたことがあるが、その中で軍隊における歩兵戦術の変化を語っている部分がきわめて印象的であった。「チームワーク」を考える際に参考になると思う。 すなわち、近世のヨーロッパの軍隊の特徴的な敵陣突破の戦法は、銃火の中でも隊列を決して乱さないように集団訓練を施された密集歩兵集団による中央突破であったという。映画の「戦争と平和」のシーンを思い出せばよい。基本的にこの戦法でもってヨーロッパの軍隊はアジア・アフリカの軍隊を圧倒し、世界中に植民地を広げることができた。しかし技術革新の結果、この戦法は通用しなくなってしまう。 つまり小銃の射程距離と連発性能の向上である。単発銃が連発銃となり、射程距離が100メートルから1000メートルを超えるようになると、在来戦法による歩兵集団の前進は耐え難いほどの犠牲を伴うことになった。とりわけ普仏戦争での歩兵の犠牲が甚だしかったため、両国はこの伝統的な戦法を廃止し、兵士は密集集団を組むのではなく、散開して遮蔽物を利用しながら前進するようにいったんは改める。 ところが非常に興味深いことだが、しばらくすると再び元に戻ってしまうのである。歩兵操典は再び改訂され兵士は昔どおり「肘と肘とを触れ合わせ、ドラムとラッパの響きとともに前進する」ことになる。なぜ、この様な不合理なことになったのか。 「人間はなぜ戦うのか」という基本的な問題にも関連するが、散開する隊形では兵士は全体の状況を把握できず、孤立したことで士気が低下し、戦列からの離脱者が続出したのである。結局、密集隊形を組む以外に全員を一つにまとめることは出来ないと判断され、この「戦争と平和」スタイルの攻撃方法は変わることなく、第一次世界大戦では人類史上最も悲惨と言われる兵士の犠牲を生じさせることになった。そんな話であった。 考えるに技術革新(小銃の進化)にともない新しい戦闘方法(散開方式)は工夫されたものの、それに応じた適切な「チームワーク」手法の開発が追いつかず適応できなかったことによる悲劇と整理できる。 21世紀をひかえ、日本企業は組織をより柔軟でソフトなものに変える必要性が叫ばれている。問題は、今も昔も密集隊形から分散隊形に移行するとモラルの問題が生ずるが、それをどう解決するかということだろう。 携帯できる小型の通信手段が開発され、現代の歩兵は小規模な集団で散らばって行動出来るようになっている。未来型の企業組織においても、構成員はそれぞればらばらに行動するものの、全員による情報の共有が可能にする情報化推進が重要になってくるのである。 同時に「個」が尊重されながらも企業の一体感(総合力)を維持できることも大事になる。共通の価値観として「企業理念」の確認が大切になってくると思う。 橋本尚幸 |
1997年12月1日月曜日
「21世紀型チームワーク」と企業理念
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